ITサービスの管理標準が無かった時代に、ITサービスの成功事例を集めて構築されたのが、ITIL(Information Technology Infrastructure Library)です。ITILによってITサービスの内容が整理できるようになり、サービスの費用対効果や市場ニーズへの対応力を向上させることができました。少し古い情報ですが2015年の時点でITILの認知は全体の70%、活用している企業は44%という大手メディアの調査結果があり、現在ではサービスやシステムの管理標準として多くの企業で採用されています。今回は、ITILの概要やメリットについてお伝えしていきます。
ITIL®とは
ITILとは、Information Technology Infrastructure Libraryの略で、ITサービスマネジメントシステムのベストプラクティス(成功事例)集のことを指します。
2019年2月に最新版であるITIL4がリリースされていますが、今回はITILv3についてお伝えしていきます。
ITIL4については、詳しく記載した記事がありますので、ぜひご覧ください。
最新のITサービスに対応したITIL®4とは?ITIL® v3からの変更点や内容について紹介
ITIL®を活用するメリットとは
ITILを活用すると、ITサービスにおける対応内容の整理ができるため、サービス提供の費用対効果が向上し、顧客ニーズへの対応力も上がっていきます。利用者の満足度も向上します。
また、インシデントが発生した際の対応がマニュアル化されるため、最短でのサービス復旧・報告が可能です。発生したインシデントについては分析・対策を繰り返していくことにより、新しいインシデントの発生率を下げ、ITサービスの安定提供や中長期的なコスト改善に繋げていけます。
インシデントとは、サービスの停止や品質低下により、ビジネスに影響を与える「できごと」のことです。ITILの内容で頻繁に出てくる内容のため、頭に入れておきましょう。
ITIL®v3のライフサイクルの内容とは
ITILの内容は、次の5つのカテゴリに大きく分類されていて、いずれも企画・構築・運用というシステムライフサイクルに準じています。順番にみていきましょう。
- サービス・ストラテジ
- サービス・デザイン
- サービス・トランジション
- サービス・オペレーション
- 継続的サービス改善
サービス・ストラテジ
ITサービスの戦略立案についてのカテゴリです。事業目標達成のために、どのようなITサービスを立案・提供するかを決定していきます。財務管理や需要管理・サービスポートフォリオ管理・事業関係管理といった内容が含まれます。
サービス・デザイン
ITサービスの設計や変更についてのカテゴリです。サービス・ストラテジで検討・決定した内容に従ってシステムを設計していきます。ITサービスの新規構築だけでなく、既存ITシステムの変更も含まれ、システムの品質やコスト面の考慮をしながら、より無駄のない業務プロセスをデザインします。
サービス・トランジション
トランジションとは移行の意味です。サービス・トランジションのカテゴリでは、ITサービスの立ち上げや、現在運用中のサービスから新しいサービスへの移行について設計されています。「変更管理」、「サービス資産および構成管理」などのプロセスで検討を実施し、組織への負担を抑えながら移行を円滑に進めることが重視されています。
サービス・オペレーション
サービス・オペレーションでは、ITサービスの運用について言及しています。「インシデント管理」「要求実現」「イベント管理」「アクセス管理」「問題管理」の5つのプロセスで、顧客などからのサービス要求を処理するカテゴリです。サービス・デザインで合意されたサービスレベルに基づき、顧客・ユーザーに対してITサービスを提供していきます。
継続的サービス改善
ITサービスの継続的な改善について整理されているカテゴリで、企画・構築・運用すべてのライフサイクルのフェーズで取り扱われます。PDCAサイクルを基本として、ITサービスの改善を実施し、組織として高いパフォーマンスを実現できるようにしていきます。
ITIL®の資格について
弊社にて取得できるITILv3の資格体系は、下記の通りです。
- ファンデーション
- プラクティショナ
- インターミディエイト
- エキスパート
ITILv3の資格体系については、詳しく記載した記事がありますので、ぜひご覧ください。
ITIL®認定試験とは?その概要や認定資格の種類、受験方法までを紹介
ITIL®では「3つのP」のバランスが重要
ITILには、「3つのP」と呼ばれる言葉が存在し、その内容は「プロセス(Process)」「人(People)」「製品/技術(Product)」の3つです。ITILでは、この「3つのP」のバランスが重要で、適切な割合は4:4:2と言われています。ITサービスについては製品/技術の導入に目が行きがちですが、実はプロセスの改善や人財の育成の方が製品/技術よりも重視すべき内容なのです。
ITIL®運用にあたっての注意点
ITILの運用にあたって、勘違いを起こしやすい部分が存在します。ここではITIL運用についての注意点を順番にみていきましょう。
インシデント管理のみの実施
インシデントの内容を記録しているだけでは、原因が究明できず、具体的な対処も講じられません。原因の究明と対処には、問題管理と変更管理のプロセス導入が重要です。
問題とは、インシデントの根本原因のことを指し、問題管理とは、インシデントの根本原因を解明して再発を防止することを目的として実施されます。
変更とは、対象のITシステムについて、ハードウェアやソフトウェア、人員などを追加・修正・削除し、構成を改善することです。変更管理は、変更作業に伴うリスクを適切にコントロールし、インシデント発生などの影響を最小限に抑えることを目的として実施されます。
問い合わせやサービス要求を電話で受け付け
サービス要求とは、ユーザーから寄せられるITサービスに対するさまざまなリクエストのことを指します。しかし問い合わせやサービス要求を電話で受けていると、記録を残すために非常に手間がかかるので、問い合わせやサービス要求はメールで送信してもらうようにすると記録が残りやすく安心です。問い合わせやサービス要求の件数が増えてきた場合は、Webフォームを作成して問い合わせやサービス要求を記入してもらうようにすると、内容が整理されるため管理がしやすくなります。
すべてのサービス要求や問い合わせをインシデントとして処理
インシデントの定義は、冒頭で記載した通りサービスの停止や品質低下により、ビジネスに影響を与える「できごと」のことです。インシデントの定義を理解していない場合、すべてのサービス要求や問い合わせをインシデントとして処理してしまうという事態もあり得ます。インシデントを含めた言葉の定義をよく理解したうえで対応を実施していくことが必須です。
ITIL®の活用で効率的なITサービス運営を
ITILとは、Information Technology Infrastructure Libraryの略で、ITサービスマネジメントシステムのベストプラクティス(成功事例)集のことを指します。ITサービスにおける対応内容の整理ができることに伴う費用対効果の向上や、市場対応の能力向上などさまざまなメリットがあります。実施にあたっては陥りがちなインシデントのみの対応、サービス要求の電話処理などの例もあるため注意が必要です。
ITILを導入してITシステムやITサービスの継続的な改善に役立てていきましょう。ITILの導入でお困りの際には、ぜひDXコンサルティングへお気軽にお問い合わせください。
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