ITIL®4の狙い
ITIL®(IT Infrastructure Library)は、過去30年以上にわたって、ITサービスマネジメントの実践的なノウハウを世界中に広めてきました。ITIL®の手法は数多くの企業や機関において採用され、社会基盤となったITシステムの安定稼働に貢献してきました。
2019年に公開されたITIL®4では、企業のデジタル・トランスフォーメーションを支援するために、IT組織のアジリティを高める最新のアイデアが、数多く採用されています。
中でも特徴的なのが、リーン(Lean)の概念を随所に取り入れたことです。
「多種少量生産」という制約の中で、いかに競争力の高い製品を作り続けるかがリーンの焦点であり、そこから生まれたアイデアは、今日のIT組織におけるアジャイルやDevOpsの思想にも引き継がれています。
リーンによって推進される組織変革とは、価値創出に貢献しない「無駄」を削ぎ落して、全体最適化を実現することです。
リーン技法を用いることで、様々なチームが関連するワークフローを可視化し、組織内に存在するボトルネックを解消して迅速な価値創出を目指します。
リーンは、IT組織のアジリティを高めるためのガイドラインとなるものです。
ITIL®プラクティス
ITIL®4では、先進的なIT組織を運営するために必要な34個の活動を識別して、それらをITIL®プラクティスとして定義しています。
ITIL®プラクティスの中には「インシデント管理」「問題管理」「サービスデスク」など、以前からよく知られている活動の他に、「アーキテクチャ管理」「組織変更の管理」「戦略管理」など、組織変革において不可欠な活動も含まれています。
34冊の『ITIL®4プラクティスガイド』には、各プラクティスを適用するための実用的なノウハウが紹介されており、そこにはIT組織のアジリティを高めるための様々な手法が組み込まれています。
ITIL®4の実践者は、リーンやアジャイルを意識しなくても、それらの便益を得ることができるように設計されています。
ITIL®成熟度モデル
IT組織が自らの活動にITIL®を適用しようとする際、何から始めれば良いかの判断が難しいことが課題でした。
従来のアプローチでは、専門家の力を借りて現状のアセスメントを行い、専門家のアドバイスを受けながら導入を進めていくことが一般的でした。そのことがITIL®導入のハードルを高くしていたとも考えられます。
『ITIL®4プラクティスガイド』では、専門家の力を借りなくても導入が進められるように、セルフ・アセスメントのナレッジが提供されています。
それがITIL®成熟度モデルであり、組織自身によるスモールスタートを可能にしています。
ITIL®成熟度モデルでは、基本となる5段階の能力レベルを定義しています。
さらに、プラクティスごとに具体的な能力基準を定めることで、自己判定が可能なように設計されています。
現在の能力レベルを自己判定したら、それに見合った能力開発モデルを適用することで、ITIL®導入を段階的に進めていくことが可能になります。
ITIL®プラクティスの学習
ITIL®プラクティスについて重点的に学習する、新しい研修コースがリリースされました。
ITIL®スペシャリスト/プラクティス認定シリーズの3コースです。
プラクティス認定シリーズの各コースは、対象となる5つのプラクティスについて、プラクティスガイドの内容に基づいて該当プラクティスを実践するための理解を深めるコースです。
ITIL®成熟度モデルに基づいた実践アプローチを基礎から学ぶことができます。
図1. ITIL®4の資格体系
プラクティス認定シリーズの一つである『モニタリング、支援、実現(MSF)』コースでは、サービスの提供に関わる一般的な活動として「インシデント管理」「サービスデスク」「サービス要求管理」「問題管理」「モニタリングおよびイベント管理」の5プラクティスを学習します。(図1)
ITサービスの提供や運用に携わっている幅広い実務者の方にお勧めできるコースになっています。
ウェビナ動画および講演資料
2024年8月1日に開催されたPeopleCert主催ウェビナにて、本コラムの内容について講演いたしました。
講演はYoutubeにてご視聴いただけます。
https://www.youtube.com/watch?v=iSxtApvEt8Y
また、資料はこちらのリンクからご覧ください。
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