COLUMN コラム

マルチサービス/マルチベンダー管理を担うサービスインテグレータとは? SIAM™を活用した新時代のマルチベンダー管理を紹介

DXサービスマネジメント部
テクニカルエキスパート認定インストラクター
長崎 健一

長崎写真

ITアウトソーシングの現状

ITに関連する業務を外部委託することをITアウトソーシングと言います。外部に委託される業務には、ITシステムの企画、開発、運用、保守およびユーザサポートなどの業務が含まれます。それらを一括して外部委託するフルアウトソーシングが採用されることもあれば、運用業務だけを切り出して外部委託する運用アウトソーシングになることもあります。フルアウトソーシングといっても、現実的には一つのベンダーだけで全業務を完遂させることは難しいため、プライムコントラクタ(一次請け)とサブコントラクタ(二次請け)という形態で、複数のベンダーが分担して業務を遂行することが一般的です。

フルアウトソーシングの利点

IT業務をフルアウトソーシングすることを選択した場合、委託元であるユーザー企業はIT業務に人員や資源を割く必要がほとんどありません。ITシステムの企画から運用・保守までをプライムコントラクタが面倒を見てくれますから、ユーザー企業は本業に専念することが出来ます。ITに精通したスタッフは必要なく、プライムコントラクタの管理だけをやっていればいいという状況が生まれます。このように、フルアウトソーシングは、人材難への合理的な解決策として一般的なものになっていきました。例えば、ある自動車メーカーは、ITに関連する業務を一つの大手ベンダーにフルアウトソーシングすることで、IT部門の人員を大幅に削減することに成功しました。

フルアウトソーシングの課題

一見良いこと尽くめのフルアウトソーシングですが、実は多くの課題があります。一つは、透明性です。一般的なプライムコントラクタは、サブコントラクタの提示価格に上乗せして、顧客へ提示します。これは顧客からは不透明なものに見えます。また、ベンダー・ロックインの問題もあります。フルアウトソーシングを長く続けることにより一つのベンダーへの依存度が高くなり、他のベンダーに乗り換えることが困難になります。これは適正な競争原理が働かない状況を招く可能性があります。
また、変化への対応力も課題となります。ユーザー企業において新しいニーズやアイデアが生まれた場合、フルアウトソーシングの環境では、それらに柔軟に対応することが難しくなります。例えば、先進的なテクノロジーを提供するベンチャー企業が市場に現れたとしても、プライム/サブコントラクタの構造に組み入れることは容易ではありません。

マルチサービス/マルチベンダーの利点

前述の通り、フルアウトソーシングには透明性や柔軟性や関する課題があります。一つのアイデアとしては「顧客 ― プライムコントラクタ - サブコントラクタ(複数)」という二重構造をやめて、「顧客 ― ベンダー(複数)」というシンプルな形態にすることです。こうすることで、価格の透明性を高め、ベンダー・ロックインを防ぎ、新たなベンダーとの協業もやりやすくなります。このように、複数のベンダーを顧客が直接管理してIT業務を遂行することを、マルチサービス/マルチベンダーと言います。マルチサービス/マルチベンダーは、市場において最適なベンダーを調達することを容易にし、必要であればクラウドサービスを組み入れることもできます。これは、ベスト・オブ・ブリード(Best Of Breed)思考の実践でもあります。例えば、先述の自動車メーカーには後日談があり、大手ベンダーへのフルアウトソーシングをマルチサービス/マルチベンダーに切替えたところ、アウトソーシング費用が大幅に削減したことが紹介されています。

マルチサービス/マルチベンダーの課題

マルチサービス/マルチベンダーは、ITアウトソーシングにおける透明性や柔軟性を高めることに貢献しますが、一方で、複数のベンダーを直接管理することは、顧客にとって大きな負担となります。また、マルチサービス/マルチベンダーならではの課題もあります。

  • 複数のプロバイダのガバナンスやマネジメント、統合、協働、協調
  • 複数のプロバイダからの複数のサービスによるビジネスニーズの充足
  • 求めるプロバイダやサービスを市場で見出す
  • 各々の目的にこだわりがちなプロバイダを共通目標に向かわせる
これらの解決策となるのがSIAM™(Service Integration And Management)です。SIAM™は、複数のベンダーが関わるマルチサービス/マルチベンダーを管理するための機能として、サービスインテグレータを置くことを提唱しています。サービスインテグレータは、顧客の代理人として複数のベンダーを管理します。顧客は、複数ベンダーの管理をサービスインテグレータに委任することで、自らのビジネスに専念することが出来ます。
サービスインテグレータの概念を図1に示します。

図1. サービスインテグレータの概念

サービスインテグレータの役割

SIAM™のモデルでは、顧客は個々のベンダー(サービスプロバイダ)と直接、契約関係を持ちます。サービスインテグレータと各サービスプロバイダとの間には、契約関係はありません。その点で、プライムコントラクタ/サブコントラクタの契約構造とは明確に異なります。ただし、顧客と各サービスプロバイダとの契約の中に、サービスインテグレータが顧客の代理人としてサービスプロバイダを管理することを明確に謳っておきます。そうすることで、サービスインテグレータは顧客の代理人としての役割を果たすことができるのです。
図2はSIAM™における契約関係を説明しています。

図2. SIAM™における契約関係

デジタル・トランスフォーメーションとSIAM™

最近のデジタル・トランスフォーメーションの流れの中で、これまでアウトソーシングしていたIT関連の業務を内製化(インソーシング)するユーザー企業が増えています。例えば、ある電機メーカーは、IT部門の人員を5年間で9倍に増やし、システムの企画・開発から運用・保守までを内製化したことが公表されています。今後は、競争優位に関わるような戦略的ITシステムはインソーシングし、それ以外はアウトソーシングするという、ハイブリッドなマルチサービス/マルチベンダーが一般的になると考えられます。SIAM™のモデルでは、内部サービスプロバイダ(インソーシング)と外部サービスプロバイダ(アウトソーシング)がコラボレーションして働く姿が描かれており、そのためのノウハウも多く紹介されています。SIAM™のコンセプトは、デジタル・トランスフォーメーションを推進するユーザー企業においても、価値あるものとなるでしょう。

SIAM™ is a trade mark of EXIN.

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