COLUMN コラム

バリューストリームを設計するために-ITIL®4 CDSコースのすすめ-

「ITIL®ファンデーション ITIL4エディション」の公式書籍は、2019年2月に英語版、11月に日本語翻訳版が出版され、弊社でも「ITIL4ファンデーション研修」を提供しておりますが、その受講者は500名を超えております。その後、以下の上位書籍5冊(英語版)が出版されており、日本語への翻訳も順次進んでいく予定でが、それぞれの研修コースも英語圏ではすでに提供されています。

「Create, Deliver & Support (作成、提供およびサポート)」
「Drive Stakeholder Value (利害関係者の価値を主導)」
「High-velocity IT (ハイベロシティIT)」
「Direct, Plan & Improve (方向付け、計画および改善)」
「Digital & IT Strategy (デジタルおよびIT戦略)」

これらの上位コースの中で、まず ITIL4 Specialist : Create, Deliver & Support(作成、提供およびサポート)(※)の日本語化が進んでおり、弊社でも近日中に開始を予定しています。今回は、このCDSコースの概要やコース受講の利点などを紹介いたします。

※略称CDSコース

ITIL®4とは? ITIL®v3との違い

ITIL®は、1989年に英国政府によってITサービスマネジメントの包括的なフレームワークとしてまとめられ、30年以上にわたって、世界中で活用されてきました。ITILv3では、長期的な計画に基づいたITサービスの企画・開発・提供にいかに取り組むべきか? という観点において、完成度の高いフレームワークを提示しています。

その後、ITサービスの進化に伴い、デジタルトランスフォーメーション(DX)への対応や、先行きが不透明で将来の予測が困難なVUCA(※)時代において結果を出すことが求められるようになりました。そのため、ITIL4では、リーンやアジャイルおよびDevOpsなどの業務手法を取り入れた柔軟性の高いフレームワークとして新たに見直しが図られたのです。

※VUCA:次の4つの単語の頭文字をとった造語
Volatility:変動性、Uncertainty:不確実性、Complexity:複雑性、Ambiguity:曖昧性

バリューストリームとは?

バリューストリームとは、顧客の需要の把握から、価値の実現までの流れを構成する一連のステップを指すものです。ITIL4では、それぞれ状況において求められるシナリオごとに、バリューストリームを設計していくことを中心的な取り組みとしています。

例えば、「新規サービスの導入」というシナリオであれば、「顧客要件の聞き取り~開発プロジェクトの立上げ判断~サービスの設計~システムの構築・テスト~稼働環境への移行~サービス開始」といった流れ。「システム不具合の解決」というシナリオであれば、「不具合状況の聞き取り~状況の調査~解決策のテスト~解決・復旧」といった流れが想定されます。

ITIL4では、このように各シナリオに合わせて、バリューストリームを設計し、その各ステップに取り入れるべきプラクティスを採用していきます。

ITIL®️4 Specialist : Create, Deliver & Support(CDS)コースとは?

ITIL®️4 Specialist : Create, Deliver & Support(CDS)とは、ITIL®4のマネージングプロフェッショナルの一部となるITIL®スペシャリストを指すもので、「ITIL®4 スペシャリスト:作成、提供およびサポート(CDS) ITIL®4 Specialist : Create, Deliver & Support」の略称です。ただし、重要な点は、資格を取得することよりも、CDSコースを学び、それを業務に役立てることにあります。

具体的には、バリューストリームの設計方法や、重要なプラクティス(インシデント管理、問題管理、変更実現、サービスレベル管理など)の概要について学びます。さらには、サービスマネジメントの活動を包括的に検討するための4つの側面(組織と人材、情報と技術、パートナとサプライヤ、バリューストリームとプロセス)について学習します。ITIL4の考え方を業務に活用していくために欠かせない内容を学習するコースと言えます。主なプラクティスの目的は次のとおりです。

  • サービスデザイン

必要なスキルやリソースを見極めた計画および要員編成、新規または変更された製品およびサービスに関するプラクティス、パートナおよびサプライヤ、情報、コミュニケーション、技術、そして組織とその顧客の間のやり取りのなかで、目的に適し、使用に適し、さらに組織およびそのエコシステムによって提供できる製品およびサービスの設計をすること。

  • ソフトウェア開発および管理

アプリケーションが機能性、信頼性、保守性、コンプライアンス性および監視性の面で内外の利害関係者のニーズを確実に満たせるようにすること。

  • 展開管理

さまざまなサービスコンポーネント(技術的および非技術的の両方)を稼働環境に展開します。または修正プログラムをユーザー実稼働環境に展開すること。

  • リリース管理

リリース(ローンチ)計画を完成させるために必要なスキル、ツールおよびそのほかのリソースを提供します。また、組織内の営業部門、マーケティング部門などほかのグループとの協力により、これら計画をユーザーや顧客に伝達できるようにすることも含みます。

  • サービスの妥当性確認およびテスト

新規または変更された製品およびサービスが、定義された要件を満たすことを確実にすること。

  • 変更実現

受け付けた変更要求のリスク評価を適切かつ確実に行い、変更の進行を承認し、変更スケジュールを管理することで、サービスおよび製品の変更が成功する回数を最大化すること。

  • サービスデスク

サービスプロバイダがユーザーに提供する単一窓口として、インシデント解決およびサービス要求(問合せ・作業依頼)の受け付けからクローズまでの責任を持つこと。

  • インシデント管理

ビジネスへの影響を最小限に抑え、迅速にITサービス/ITシステムを復旧すること。

  • 問題管理

インシデントの実際の原因を特定し、ワークアラウンドと既知のエラーを管理することで、インシデントの発生する可能性とインパクトを抑えること。

  • ナレッジ管理

組織全体の情報とナレッジの利用の有効性、効率性、利便性を維持し、改善すること。

  • サービスレベル管理

サービスレベルの明確な目標値を事業に基づいて設定し、その目標値に対して、サービスの提供を適切に評価、モニタリングおよび管理を確実にすること。

  • モニタリングおよびイベント管理

サービスおよびサービスコンポーネントを体系的に監視し、イベントとして識別された状態の変更を選別して記録および報告すること。

扱う分野が広範囲に及ぶため、対象となるのも、IT製品・サービスの作成、IT運用管理を担当するIT実務者から、サービスのエンドツーエンドの提供やサポートを担当する実務者までと幅広く、サービスマネジメントに関わる人にとって、まず学ぶべき内容といえます。

ITIL®️4 Specialist : Create, Deliver & Support(CDS)は、インシデント管理、問題管理、変更実現、サービスレベル管理など実務と関連が深いプラクティスについてもコース内容でカバーしているため、IT戦略の中核を担う人材として、幅広く活躍ができます。メリットとしては、高い価値を持ったIT対応サービスの構築、維持を実現し、競合に対して優位性を持てるようになるうえ、顧客の需要増大にも対応するサービスの提供実現も可能です。

ITIL®️4 Specialist : Create, Deliver & Support(CDS)の資格を取得して適切なバリューストリームの設計を

ITIL®4 スペシャリストのなかでも、ITIL®️4 Specialist : Create, Deliver & Support(CDS)はITサービスマネジメントにかかわるすべての人を対象とした資格です。ITサービスマネジメントの価値を向上させるには、ITIL®️4 Specialist : Create, Deliver & Support(CDS)の学習をおすすめします。

ITIL®️4 Specialist : Create, Deliver & Support(CDS)はIT製品、サービスの作成から提供、サポートに及ぶまでの非常に広範囲に及ぶ資格です。そのため、学ぶべき項目も多くなりますが、しっかりと理解すれば自社のIT製品、サービスの作成・提供・サポートに関与し、顧客に最高の価値を提供する役割を果たせます。

社内でITIL4を導入すれば、ITシステムやITサービスの継続的な改善に寄与します。ITIL4の導入や研修など、サポートを検討する場合はDXコンサルティングへお気軽にお問合せください。

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